Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



ふたり分の体温が混ざったことで、温かくなったわたしの左手。

その彼の余熱を逃さないよう握りしめながら、靴の先で地面の砂を弄ぶ。



「……心配……ねーよ」



ところどころ、彼の声が聞こえてくる。



「上手く……から」



もっと意識して聞き耳を立てれば、なんて言っているのかわかる気がしたけれど。

わざわざ離れて、声のボリュームを抑えている彼のことを思ったら、聞かない方がいいんだと思った。


足元でわざと、砂利の音を立てて。

わたしはできるだけ、聴覚をシャットアウトできるよう努力した。