さっきの「離したくない」でもじゅうぶんだったのに。
わざわざ伝えてくれるなんて、ドキドキしすぎておかしくなりそう。
ううん。
もうおかしくなってるんだ。
たとえ、コイビトじゃなくても。
たとえ、会ったばかりの人でも。
目の前の彼が求めてくれるなら、こうすることが当たり前だとさえ思えたから。
「つーか、敬語やめろよ。俺はずっとタメで話してんだろ」
「……え、でも……」
もしかしたら、歳上かもしれないのに。
むしろ、見た目がものすごく大人っぽいから、その可能性のが高いくらいだ。
わたしと大きく離れているようにも、見えないけれど……。
いくつなんだろう?
歳を尋ねようかと思って、……寸前で、思いとどまった。
「えと、わかった。気をつけま──気を、つける」
「ん」
せっかくの距離を縮めるチャンスを逃したくなくて、素直に頷くことにする。
わたしの肌をなぞるように動いている、彼の親指。
少しだけ、冷たく感じる体温。
……外でわたしを待っていたせいかな。
そう思いあたって、なんだか申し訳ない気持ちになった。
「……わたしのこと、どれくらい待ってた、の?」
「さあ? わかんねーけど、学校終わる時間なら大体予想ついたし。タイミング合わなそーならすぐ帰るつもりだったから、そんな待ってねーよ」
テキトウに答える彼の言い方に、少しだけ違和感を覚える。


