「……さっきの車は、同級生の子の、お家の車で……」
繋がった左手を見下ろせば、たちまち、どきんどきんと動悸が強くなる。
頭がのぼせたように、目の前の彼のことしか考えられなくなる。
「事情を話したら、親切でわたしも一緒に乗せてもらえただけ、で」
気づけば、なぜだか言い訳じみたような言葉が、滑るように口から出ていた。
「だから、大事にされてるとか、そういうのじゃ……。話すようになったのもごく最近なくらい、だし」
「……へえ」
興味があるのかないのか、よくわからないような返事。
だからなに? って感じだ。
わたしは恥ずかしくなって口をつぐんだ。
ほんと、なにを言ってるんだろう。
わたしと本条くんがどんな関係値であろうと、──このひとには、全く関係のないことなのに。
「わざわざそんなこと、俺に詳しく教えてくれんだ?」
追い討ちをかけるように言われて、いたたまれなくなる。
熱くなった顔を見られたくなくて、隠すように俯いて。
触れ合う指からも目を逸らして、あまり意識しすぎないようにした。
……それなのに。
彼の空いたほうの手が、わたしの髪をそっと退けて、赤くなった頬を暴いてくる。
頭上で、ふっとからかうように笑われた。


