ビニール袋を、ぎゅっと両手で握りしめる。
気を取り直して、帰路につこうとしたところ。
「肝座ってんな」
面白がるような声が、後ろから追いかけてきた。
驚く間もなく、足音が隣に並ぶ。
思わず歩を止めると、
「フツーはひとりになるの、怖がるもんじゃねーの。さっきの今で」
見上げる前に、こちらを窺うように覗き込まれて、ドッ、と心臓がひときわ大きく高鳴った。
まんまと呼吸が乱れてしまう。
もう一度、彼の瞳がわたしを捉えて、──同時に、わたしの心まで、捕えてしまう。
「……っえと」
「うん?」
彼は口を開けたまま立ちすくむわたしに向かって、答えを促すように、軽く頭を傾けた。
「怖いです、けど」
「なんだよ。怖ぇんじゃん」
でも、だって。
家に帰らないと。
……わたしは今、ひとりで暮らしているから。
こういうときに迎えにきてと頼りたいお母さんやお父さんは、だいぶ離れたところに、住んでいるし。
ひとりで帰るしか──、
「危ねーから、送る」
ポン、と励ますように頭に触れられて、わたしはまた固まってしまった。
……いちいち、頭の中がプチパニックだ。
大きな手のひらの優しい感触が、しっかりと、わたしの中に残る。
胸が苦しい。
指先が震える。
一度平静を取り戻したくて、ゆっくり息を吸って吐いてを繰り返した。
革靴の心地よい音が離れていくのを、ぼんやりと聞いていると、
「どっち?」
僅かに先まで歩いた彼が、分かれ道を前にしてこちらを振り返った。


