10分ほど経てば、窓の外の景色が見慣れたものになってくる。

昨日も徒歩で通った、駅から家までの道のりとほぼ同じ。

住宅街を通り抜け、大通りに出て、郵便局を目印に角を曲がる。

しばらく真っ直ぐ走り続けると、昨日立ち寄ったコンビニが見えてきて。

その脇道へと入れば、すぐ、小さな公園がある──。

前を通り過ぎるとき、無意識で、近くに“あの人”の姿がないか確認してしまった。


……いない……。

そりゃあ、当たり前、だよね。


もともと昨日だって、公園に用があったわけじゃなくて、わたしのことを待っていてくれただけ、みたいだし。

はじめて見る人だったから、ご近所さん、というわけでもなさそうだし。

もうきっと、……会うこともない、し。



「どうした?」

「……っ、なんでもない」



本条くんが不思議そうに覗いてくるから、わたしは慌てて首を振る。



「ちょっと、ぼーっとしてただけ」

「あそ。……明日の朝、勝手に家出るなよ」

「えっ?」

「迎えにくる。朝なら裏門から入れば人目につかないし、文句ないよね」

「わか、った」

「ん。いい子」



まるでペットを相手にするみたいに言われて、なんとなくこそばゆくなる。