唖然として、その姿を見送る。
……わたし、本当につけられてたんだ……。
……いつから?
ついさっき、コンビニから出てきたところだったのに。
だんだんと実感が湧いて、恐怖がにじり寄ってくる。
無意識に呼吸を止めていたことに気がついて、そっと息を吐き出した。
わたしは戸惑いがちに、再び隣を見上げる。
今度は視線が交わった。
わたしを見下ろす、真っ黒な瞳。
まるで頭上に広がる暗い空を、そのまま映しているみたい。
そこに、近くの灯りが、星のようにきらきらと反射していて……。
ずっと見ていると、……その内、呑み込まれてしまいそう。
夜空をじっと眺めたときの漠然とした恐怖に似た、不思議な危うさを感じた。
「悪い」
降ってきた謝罪とともに、左腕が解放されて。
わたしは我に返って瞬いた。
──危ない。
気を抜くと、すぐ見惚れちゃう。
気をつけなきゃ……。
触れられていた箇所に、彼の体温が余熱のように残っている。
いきなりでなにがなんだか、頭が追いつかなかったけれど。
彼がわたしの腕を引いたのは、……わたしの安全を確保するため、だったのかな。
そう納得すると、触れられていない今、途端に心細さに襲われた。
それが、顔に出てしまったのか、
「怖かったな」
寄り添うような言葉が投げかけられる。
わたしはコク、とぎこちなく頷いた。
「声も出せねぇほどか」
彼の形のいい目が、柔らかく細められた。
驚きとはまた別の意味で心臓が跳ねて、身体の内側が燃えるように熱くなる。


