Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



「頭、ぽわぽわしてきたっしょ。余計なこと考えないで、俺たちとも仲良くしよ」

「澪奈ちゃんすげー可愛いしさ、イブキが独占するにはもったいないって」



降ってくる言葉が、ただの音となって聞こえる。


なにこれ。

からだ、熱い……。

動悸もする。

熱でもあるみたい。


気だるくて、……もうこのまま、動きたくないよ。

でも、そんなの……だめ……。



「気持ちよさそーな顔になってきたね」



こちらを見守るように覗き込まれて。

濡れた目で訴えるように、見つめ返すことしかできない。


やだ。

こわいよ。


ぐわんぐわんと頭を襲う、締めつけるような鈍い痛み。

わたしを追い詰めるそれに、なんだか心細いような気分になってきて。



「……ん、……」



たすけて、と言いたくて言葉にならない声を絞り出した。

なにかを求めるように、胸の近くで手を開く。



「……どーした?」



空をさ迷っていたわたしの手を、誰かが受け止めてくれた。

わたしは安心して、その手をぎゅっと握り返した。



「は、なに……これ。さっきまで嫌がってたくせに」



与えられる刺激が、徐々にわたしの意識を蝕んでいく。


このまま、続けてもらえれば……。

背中からズブズブと水の中に沈んでいくように。

真っ暗な闇の中に落ちていける。


恐怖から、逃げられる……。


だから。



やめないで、……。



言葉にできない代わりに、懇願するように繋がる手を頬に引き寄せた。

外側から、内側から。

わたしを侵食する全ての感覚を受け入れるように、目を閉じる。



「……甘えてんの? やっべ……まじで、可愛ーね……」



どこか切なげな響きが、聞こえた瞬間。

なにかが衝突し合うような──大きくて重たい音が、あたりの空気を裂いた。