──そのまま半ば引きずられる形で連れていかれたのは、人気のない裏路地。
奥にある倉庫のような扉の前に、少し開けた空間があった。
そこへ乱暴に放り込まれて、よろけながらもなんとか踏みとどまる。
わたしを囲うように立つ3人と、向き合う形になった。
「んな怯えんなよ。頼みたいことがあるだけだって」
わたしの腕を掴んでいた人が、片手でスマホをいじりながら冷たく言った。
「そーそー。澪奈ちゃん、イブキと親しい仲、なんでしょ? そんなの、俺らからしたら好都合でさ」
──イブキ。
彼らの口から聞き馴染みのある名前が出てきて、わたしは戸惑いの目を向けた。
「えー……なにその目、カワイイ」
「つーかまじで聡学の制服じゃん? ……やべ、興奮する」
3人とも、楽しそうにニコニコしているのに、親しみやすさなんてちっとも感じない。
この人たち、……イブキくんの、友達なの?
こわい……。
物珍しそうに向けられる視線から逃れるように、わたしは顔を伏せた。
「なあ。まだ連絡つかんの?」
「んー、電話でもしてみっか」
「ったく。おせーなあ。……暇つぶしくらい、許されっかな」
「あー。いいんじゃん? イブキにはあとで謝ればいいし、聡学の生徒と……なんてそうそうない機会っしょ」
「てか、その写真撮って送れば飛んでくるんじゃね」
ケラケラ、と人を馬鹿にするような笑いが、人けのないあたりに響いた。
わたしに聞かれていることなんてお構いなしというように、テンポよく交わされる言葉。
その会話の内容をしっかり理解できなくても、これから起きることが、わたしにとってよくないことなのだという予感がジリジリと迫ってきていた。


