「ちゃんと頼ってこれて、偉いね」
ふわりと柔らかく微笑まれて、思わず頬が熱くなる。
本条くんは、腕時計に視線を落とすと、
「でも今はあんまり時間ないし、……放課後、うちの車で話そう。ついでに家まで送るよ」
わたしの返事なんて聞く気がないというように、ポンポン話を進めていく。
「HRが終わったら迎えに行くから。教室で待ってて」
言い終わるなり、じゃ、と歩き出してしまった。
──迎えにくる?
わたしはサアッと冷や汗をかいた。
「ま、待って!」
遠のいていく背中を、制服の裾を掴んで引き止める。
「っ、なに」
「ごめ、あのっ……。教室じゃなくて、裏の……職員用玄関で、待ち合わせようよ。駐車場、近いし……」
「……」
俯きがちに言ったわたし。
黙ってこちらを見下ろす本条くんの視線が、じりじりと前髪の生え際あたりに刺さっている感じがした。
それから、少し間が空いて、納得したような声が上がる。
「ふーん。平石さんは俺と一緒にいるところ、人に見られたくないんだ」
「……、だって本条くん、人気もの、だから……」
「面倒ごとは避けたいってことね」
ぴしゃりと言い当てられて、ぐうの音も出ない。
傷つくなあ、なんて呟きまでついてくる。


