……族。
……って。
それっていわゆる、……暴走族?
またも馴染みのない、ドラマや漫画の中で聞くような単語が飛び出してきた。
現実味を帯びないその響きに、感情が追いついてこない。
「……わたしが、本条くんを誘う餌だ、っていうのは……?」
こんなこと、今の立場で、真正面から聞くようなことじゃないのかもしれない。
けれど来栖くんはどういうわけか、わたしに対して快く、色々と説明してくれるから。
甲斐田くんに本条くんが危ないってこと、知らせなきゃっていう焦りからの質問。
「そんなの、本条が俺らにとっては敵だからだよ。澪奈ちゃんは、いわば人質、ってとこ」
本条くんが、百鬼の、敵……。
わたしは、人質。
答えを聞いて一番に浮かんだのは、果たしてわたしにそんな価値があるの? なんて疑問。
でもすぐに。……わたし個人じゃなく聡学の生徒であることが重要なのかも、と思い直す。
『ここ数年、なぎ高のやつらは俺たち聡学の生徒には干渉できない状態にあったんだ。それは、暗黙のルールみたいなものでさ』
前に、本条くんが言っていた、暗黙のルール。
きっとそのせいで、なぎ高の人たちは聡学に近づけない。
ただの他校の生徒じゃなく……百鬼という、暴走族のチームだから?
そういうことだったのかな。
なのに、森下くんに乗せられて、聡学の生徒であるわたしが、わたしのほうから、ここへ入り込んでしまったから──。
「っと。集まってきたね」
ふと、ステージの外へと顔を覗かせて、来栖くんが呟いた。
気づけば、あたりが騒がしくなっていきている。
わたしも来栖くんと同じように幕の向こうを伺えば、……続々と集まってきているなぎ高の生徒たちが見えた。
これがみんな、 “百鬼”の、メンバー。
既にパッと見じゃ数えられないくらいの人数だ。
この中に、本条くんがひとりやってくる。
その状況がいかに恐ろしいことなのか、実感がふつふつと湧いてきた。
どうしよう。
どうしよう……。
繋がったままの通話。
甲斐田くんは、状況を掴めたのかな。
本条くんと連絡とれたり……。
なんとかできる?
でも……暴走族だなんて乱暴な人たちなうえ、この人数だよっ?
ここへやって来てしまったら最後。
ひとりからふたりになったところで、対処なんて無理に決まってる。
せめて、百鬼の中に、味方につけられる人がいたらいいのに──……。


