Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-




「もしもし?」

『あっ、出た! よかったあ。澪奈、今どこにいるの?』

「へっ? ……どして?」



いきなり核心を突くような問いが飛んできて、動揺してしまう。

声が震えてしまわないように気をつけた。



『買い物してたら、偶然、甲斐田くんと会ってね。澪奈と一緒じゃないのかって驚かれちゃって。わけわかんないけど、わたしから連絡するように言われたんだよ』



頭から、どばっと水を被ってしまったような。
そんな心地。


──まずい。

その可能性は、全く考えてなかった。

いや、でも、偶然にもほどがあるよ……!


思わず叫びたい衝動に駆られながら、必死にポーカーフェイスを保つ。


……ということは、甲斐田くんにも嘘がバレてしまったことになる。

ど、どうしよう。

大変なことになっちゃった。

事態の収拾がつかなくなってきている気が……。


とことん自分の詰めの甘さに頭を抱えたくなった。

けれど、来栖くんの目があるから、わたしは平静を装って、



「んーと……。ちょっと色々あって」

『わたしのこと、勝手に言い訳に使ったでしょ。そういうときは先に言ってよね。びっくりするじゃん』

「そ、そうだよね。ごめんね」

『まあ、いいけどさあ。わたしより甲斐田くんが可哀想だよ? まるで浮気が発覚した彼氏みたいな形相で……やっぱり澪奈たち、ただの友達じゃないよね?』

「友達だってば」

『どうだかなあ』



言いながら、うう、と肩身の狭い気持ちになる。

こんなにも振り回しておいて、むしろ友達と呼ぶことすらおこがましいかもしれない。



『……それで。結局本当は、どこにいるの? 迎えに行くって言ってるけど』

「え?」



──ひょっとして。

甲斐田くん。今もそこにいるの?


決して声には出せない推察。

心の中によぎったその問いかけが、テレパシーのように届いたようだった。