Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



聞こえた内容に、思考が停止した。

動悸が激しく鳴り、思わずイブキくんを見つめる。



……なに……?

なんで……?

どういうこと?



「待ってイブキくん。あのね、今回のこと、本条くんは関係ないの。だから……巻き込まないでほしい」

「残念だけど、それはお前が決めることじゃねぇよ」

「っ、やだよ、お願い」



不穏な流れを感じとって、わたしは慌ててスマホへ手を伸ばした。

けれど、身長差のあるイブキくんから奪い返せるわけもなく。



「だめ……っ、本条くん! 来なくていいから……!」



なんとか声だけでも向こうに届くようにと、張り上げる。

そんなわたしをものともせず、用は済んだというように通話は切られてしまった。

返された小さな機械の、真っ黒な画面に打ちひしがれる。



……そんな……。


聡学となぎ高の関係は、未だに謎のまま。

それでも、良い関係を築いているようには見えない、から……。

つまり、ここは本条くんにとって、敵ばかりのようなところ。


そんな場所に、ひとりで呼び出されるなんて……。

なにをされるかわからない。


床に倒れたままの森下くんに目が止まり、わたしはゾッとした。



「イブキくん……は。本条くんと、友達なんだよね?」

「……」

「酷いこと、しないよね?」

「……言ったろ。オハナシだけで済むと思うなって」



ゆったりと落ち着いた動作で、イブキくんはわたしの体を机との間に閉じ込めるように、両手をつく。

内緒話をするみたく、顔を近づけると、



「囚われのお姫サマには、……罠だとわかってても助けに来てくれる王子サマってやつが、欠かせねぇだろ?」



まるでおとぎ話の語り手のようなセリフを、悪役さながらの調子で、口にした。