Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



ふたりの会話の内容は、さっぱり汲み取れない。


……オウサマ?


イブキくんがそう呼んだ誰かのことを、わたしは知らないけれど。

指令を下すように、言葉ひとつで菊川くんの行動を決めるイブキくんこそが、……王様そのものみたいだ、と思った。



「それと。澪奈、本条に通話繋げ」

「……へ?」

「お前のスマホからかけなきゃ意味がねぇ」

「え、……と。いま?」

「ああ。今、ここで」



はやくしろ、なんて急かされてしまって、わたしはあたふたとポケットからスマホを取り出した。

メッセージアプリを開き、本条くんのアカウントをタップする。

〈音声通話〉のアイコンを押せば、画面は呼び出しの表示に切り替わった。

そのまま繋がるのを大人しく待っていると、スマホをひったくられる。

あっ、と情けない声がもれた。



「──本条。澪奈が今、“ナギリ”にいる。迎えに来い」



わたしのスマホを耳に当て、簡潔に告げたイブキくん。

どうやら本条くんは電話に出てくれたみたいだけど、その声は、わたしには聞こえない。


甲斐田くんに嘘ついてこんなことしてるって、知られて。

きっと……怒られる。

理由だって洗いざらい吐かせられてしまいそう。

叱られた挙句、やっぱりちょろくてバカな女だって鼻で笑われるんだ。


想像してしゅんと肩を落としていると、



「もちろんひとりで来いよ。……わかってんだろ? こいつには今から、お前を誘い出す餌になってもらう」

「──」