「あんた、森下にいいように丸め込まれてんの、気づかねぇ? その、襲われたときの話。実際はほぼコレのせいで、あんたの意思なんてあったのかどうか怪しーんだよ。
コレを飲むとね、まず体が言うこときかなくなんの。うまく動けなくなって、火照って、頭が回らなくなって、聞かれたら自分の秘密をベラベラ喋りだしちゃうようなクスリ。判断力が酔ったときとか、麻酔を打たれたときに近い状態になんだよ。……いわゆる、手軽な自白剤」
菊川くんは言い切ってから、
「あ、わかる? ジハクザイ。……あんま馴染みねぇか?」
と、わたしの目の前に、森下くんから盗みとっていた小さなケースを呈示する。
「まあ、どっからか流れ込んできたせいで、別の使い方してるやつもいるみたいだけど。……だからさあ、そんな風に気に病むなんてバカバカし──あっ。なにすんの」
ふと、菊川くんの手の中から、ケースがなくなった。
イブキくんが奪い取ったからだ。
「本条から軽く聞いてたけどな。お前の“それ”、……思ったより重症、ってわけだ」
黒く小さな入れ物を見つめるイブキくんの瞳が、軽蔑したような鋭さを帯びる。
自分に向けられているわけでもないのに、首の後ろに氷を当てられたようにヒヤリとした。


