「この前は酷くしてごめんな? あんなやり方、俺も本意じゃなくってさあ」



謝られたって、はいそうですか、って、……到底許せることじゃない。

本意じゃないなんて、言い訳にもならないよ。



やるせない気持ちが込み上げてきて、言葉にできない。

黙り込むわたしに、もう一度森下くんの手が伸びてきた。




「っ、やめて……」



もう我慢ならなくなって、反射的に拒絶の言葉が飛び出した。

森下くんから逃れようと大きく後ろへと下がれば、その弾みで、かかとが何かに引っかかり後ろへ尻もちをつく。

ぽすんとわたしの体を受止めたのは、マットの感触。

ケラケラと笑声が降ってきた。



「自分からマットに誘うなんて、だいたーん」

「ち、違……!」

「背中痛いのはもうやだもんな? 今日はこれがあってラッキー。ほら、ごろーん」

「ぁ、……っ」



隙をついたように膝の裏を抱えられて、わたしはあっけなく背中から倒れた。

寝転がる形になったわたしの横に、森下くんが手をつく。



「なあ。嫌がるフリとかいいから。澪奈ちゃんの本性、俺はもう知ってんじゃん? こんなとこまで来ておいて、今さら拒否とかありえねぇし……余計な茶番はナシにしよ」



低く放たれた言葉が、ナイフのように胸を突き刺してくる。


……わたしの、本性……。


痛みを覚えた部分をさらに抉るように、森下くんの言葉を追って、自責が迫ってくる。


あの日……。

わたしは、森下くんに……。



「もっとして、って。あんとき、思ったよな?」

「……っ」



向けられる意地の悪い笑顔に、なにも返せなくなる。

思ってない、とはっきり否定することが、できなかった。