視線を車窓の外にさ迷わせる。
意識に薄い膜を張れば、見慣れた街並みは映像となって、ただ視界を流れていくだけ。
心ここに在らず……な状態のまま、だいぶ学校まで近づいてきたあたり。
不意に、歩いている学ラン姿の男の子を見かけて、わたしは弾かれたように思い立った。
「本条くんって、……イブキくんの連絡先、知ってるんだよね?」
わたしの問いかけに反応した本条くんは、ちら、とこちらに目だけを向けて。
すぐにもう一度、元の位置へと戻した。
「そーだけど。なんで?」
「んと。よかったら、教えてもらえないかなって……」
“多々良くん”について、さりげなく確認できたら。
もし人違いでも、飛鷹に繋がりそうな情報がもらえる可能性だってある。
「俺の一存ではちょっと。本人に確認しないと」
「あ……。そうだよね」
「どうしたの、急に」
いきなりこんなことをお願いしたら、理由を追求されるに決まってるのに。
なにも考えずに聞いてしまって、わたしは当たり前のように言葉に詰まった。
頭をフル回転させて、それっぽい言い訳をなんとか捻り出そうとする。


