「なにかあった?」
月曜日の朝。
迎えに来てくれた車に乗り込むとき、本条くんにそう尋ねられた。
「え?」
「元気ないんじゃない」
「……そ、……そんなこと、ないけどな。あっでも、ちょっと夜更かししちゃった」
へへ、と乾いた笑いを浮かべれば、いまいち信じてなさそうな視線だけが残される。
けれどもそれ以上詮索されることはなく、わたしはシートに背中を預けて肩の力を抜いた。
相変わらず、本条くんは鋭い。
でも、先週の電話のことは不自然に思われていないみたいで、よかった。
それに……つい取り繕っちゃったけど、眠れなかったっていうのも嘘じゃない。
この土日の間、ずっとどこか上の空……というか、放心状態、というか。
なにも手につかなかったんだ。
土曜日──、起きて飛鷹がいないことを認識したそのとき、寂しくはあったものの、そっか、と現実を受け止めることができた。
当初の予定通り、週末も一緒に過ごせるものだと期待してしまっていたけれど、飛鷹の中では約束が前倒しになっただけだったんだ、って。
そう納得した。
だけど日曜日の終わりに差し掛かったとき、突然不安に襲われたんだ。
次の約束をしないで別れたことは初めてで、出会ってから会わない日が挟まったのも、初めてだったから。
そうなってようやく、飛鷹のほうから会いに来てくれない限り、この先、顔を合わせる機会はなくなるのだということを思い出してしまった。
連絡手段もなければ、居場所だって知らない。
わたしから行動に移す方法なんてなくて……、ただ待つことしか、できない。
こんなの、まさに都合のいい存在だなあ、と自嘲して。
心よりも先に、頭で自分の立場を戒めることで、なんとかメンタルを保っていた。


