湿布の匂いにツンと鼻をくすぐられて、目が覚めた。

頭の半分はまだ温かい夢の中に留まっていて、手も足もぐったりと動かせない。

ずいぶん長く眠っていた気がしたけれど、カーテンの隙間から覗いているのは、まだ薄明るい空だった。

重たい目蓋をなんとか持ち上げたまま、目の前に横たわっている体を視界に映して、ホッとする。


──飛鷹がちゃんと、ここにいる。


とくり、と心が穏やかな幸福感に包まれた。

毛布を引っ張りながら、少しだけ近づいてみる。

わたしひとり分にちょうどいいベッドと毛布なのだから、ふたりで使うには狭いし、布の面積も足りていない。


……大きいの、買おうかな……。


外へとはみ出ている肩の上にかけ直してあげて、わたしは少しの照れくささから隠れるように目元まで毛布を被った。

布に覆われた暗がりの中、だんだんと冴えてきた意識は、自然と飛鷹の腹部へと向かう。

昨夜、手当てをした部分に、痛みを与えないよう気をつけながら触れた。


……これが、どんな状況でつけられたものなのか、分からないけれど。

こんなことをする顔も知らない相手のことを、心から酷いと思った。


でも、……へっちゃらな顔をしている飛鷹自身も、ひどい。

自分のこと、ちっとも大切に思ってない、みたいな。

どうでもいい、みたいな……感じだった。


そんな風に思ってほしくない。

大切にしてあげたい。

飛鷹がそうしないなら、代わりに、わたしが──。