飛鷹の手は、わたしのことを知り尽くしているかのように、的確に、じっくりと、甘やかしてくる。

わたしがいっぱいいっぱいになるまで、そう時間はかからなかった。



「……ひだか……」

「ん?」

「もう、いいっ……から」



こんな、わたしばっかり。

同じように、飛鷹にもいい思いをしてほしいのに。


乱れた息を整える暇もなく、力の抜けた体では、涙声で訴えることしかできない。

そんなわたしを落ち着かせるように、飛鷹は度々、肌にそっと唇を落としてくる。



「知りたいんだろ? 俺のこと」

「……そ、だけど……っ」

「だからこーして……お前の隅々にまで、教えてやってんの」

「ひぁ……あ、っん……」

「俺の手、憶えて──みお」



耳元で囁かれるのと一緒に、弱い部分を攻め立てられて、わけがわからなくなって。

体の内側にたまっていた熱が、頭の中にまでじゅわっと広がっていく。


おかしくなりそうで怖かった。

好きだと口に出してしまいそうで、怖かった。


理性が大きな波に押し流されそうになって……。

何かにすがっていたくて手を伸ばすと、綺麗な手がしっかりと指を絡めて、わたしを繋ぎ止めていてくれた。



「マジで、かわいー……」

「んぅ……や、ぁ……」



そのあとも、飛鷹はわたしが苦痛を感じないように、何度も優しく追い詰めてきた。

気が遠くなるような心地良さも、愛おしさに伴う心細さも。

すべて飛鷹が教えてくれた。



「……みお、っ……」



切なげにわたしを呼ぶ声と、飛鷹の熱に、かき混ぜられて。

雨が閉じ込めた静寂へと、溶かされていって──、わたしは湿った暗闇と、ひとつになった。