Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-




「お前、初めてはどーされたいとか、あんの?」

「へ……」



……今さら?


ここまで触られたものだから、ちょっぴり気抜けした。



「飛鷹の好きに、していいよ……?」

「んだよそれ。勝手にしろってこと?」

「ち、違くて」



わたしに気を使ってくれようとしてる。

でも、あんまり嬉しくない。

だって……裏を返せば、わたしの希望に合わせられるくらいの知識や経験があるってこと……で。

それに、わたしにとっては、はじめてだからどうだとか、よりも。

相手である飛鷹にどう感じてもらえるかってことに、大きな意味があるの。


目を伏せて、わたしは覚悟を決めたように息を吸った。



「飛鷹が好きなやり方……教えて……。がんばって、おぼえる、から」



ものすごい恥ずかしいことを言ってる自覚、ある。

だけど本心……だし。

経験がないなりの、せめてものわたしの気持ち。

無事に、伝わってくれたらいいんだけど……。


窺うように見上げた先。



「……へえ?」



ぶつかった瞳が、野性的な色気を含んでふわりと弧を描いた。


──悦んでもらえた。


直感的にそう感じて、充足感がビリッと体を走る。

軽い目眩までした。



「やっぱお前、俺を煽んのじょーず、な」

「そう……? なの?」

「あーあ。もう知らね」



飛鷹は楽しそうにそう吐き出すと、わたしの両手をシーツに縫いとめてから、唇をこじ開けてくる。

深く舌を差し込まれて……、まるで食べられてる、みたいな。
丁寧に荒々しい、そんな矛盾を抱えたキス。

酸素が奪われて、頭も視界もぼんやりしてきて。

呼吸がままならず、苦しいと感じるギリギリのところでやっと解放された。


こんなの……呼吸管理まで、されているみたい。


今だけは、自分のすべてが、飛鷹の手の内に握られている気がした。

こちらを眺めながらぺろりと舌舐めずるその姿に。

ただひたすらに、ぞくぞく、する。



「……忘れたくても、忘れられない夜にしてやる」