Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-




『じゃあ、もう切るね』

「……うん、心配してくれて、ありがとう」

「ん。それじゃ……また月曜日、迎えに行くから。お大事に』



おやすみ──本条くんの声が、近くで聞こえたと同時。

飛鷹がわたしの肩先に噛みついた。



「……ぃ、っ」



痛……っ。


それほど強くはなかったけれど、肌に食い込む鋭い感触に対する驚きで、溜まっていた涙がポロリとこめかみを伝う。


でも……それよりも。

今の、本条くんに聞こえちゃったんじゃ……。



「もー切った」



わたしの焦りなんて見透かしたように、飛鷹が勝ち誇ったような表情を浮かべた。

横目で見れば、その片手はスマホの画面に触れている。

わたしは未だバクバクとしている心臓を落ち着かせるように、肩で大きく息をした。



「……なんでこんな、意地悪するの?」



本条くんに変に思われたら困るのに。

余計な心配かけたくないし、飛鷹のことだって知られたくないのに。



「なんでだろーな?」



素っ気ない返事を寄越されて、不満が残る。

だけどすぐに、もしかして、と思い当たった。


……嫉妬、……だったり?

飛鷹のこと、見てろって言われたのに、電話を気にしたりしたから。……なのかな。

わざわざ確かめたりはしないけど、もしそうだったら……嬉しい。



「あの、ごめんね……。もう他のこと考えない、から」



わたしの謝罪を受け流した飛鷹は、歯を立てた部分を人差し指でなぞったあと。

ちらりと視線を合わせてくる。