Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



それが気に入らなかったのか、



「みお。こっち向け」



飛鷹は動きを止めて、まるで命令するような調子で呼びかけてくる。

言うことを聞かないと続けない、とでも言いたげ。

別にそれでもいいと思ったけれど、……だんだん、止まったままの体温がもどかしくなってきて。

しぶしぶ視線だけ向ければ、飛鷹が満足げに目元を細めた。

その様子が妙に色っぽくて……、この眼差しから逃れたかったんだってことも忘れて、惹きつけられてしまう。



「余計なこと考えんな。今……誰が、どんな風にお前に触れてんのか、ちゃんと見てろ」



顔を近づけて、囁くように言われて。

飛鷹の声がわたしの中に溶け込んで、全身を思い通りに制御されるみたい。


もう……全部、どうでもいい。

目の前のこのひとのことを、感じられたら、それで……。


再び動き出した温かい手に、わたしが身を委ねた直後──唐突に、その音は鳴り響いた。



低く一定のリズムを刻みながら震える、デスクの上に置きっぱなしにしていた、スマホ。

数秒経っても途切れることのないそれに、



「……これ、電話」



飛鷹がわたしを見つめたまま、ポツリとひとりごとのように言った。

サアッ──と血の気が引く。


──忘れてた。

本条くん……!

通話したまま放置しちゃってたんだった……!


それなのに今、電話がかかってきているということは、一度切られたのかもしれない。

戻ってこないわたしを心配して、またかけてきてくれたのかも。

絶対そうだ……っ。



「出んの?」

「ご、ごめん……いい?」



わたしの返事に、飛鷹は小さく息をつくと、デスクへと手を伸ばした。