Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



わたしは緊張しすぎて、呼吸をするのでせいいっぱい。

助けを求めるように、そばにある飛鷹の袖をきゅっと握った。



「……あ……の、……飛鷹」

「うん?」



わたしに耳を傾けてくれたときの声が、あまりにも優しくて。

やっぱり大切にされてるんじゃ……なんて、自惚れてしまいそうになる。



「もう知ってると思うけど、わたし、……はじめて、で」



こんなことを自己申告するなんて恥ずかしいし、めんどくさいって思われるかもしれないけれど。

一応、わかっておいてほしくて。

上手にできる自信なんてないし、終始受け身になっちゃうだろうから。



「あー、ね」



飛鷹は軽く相槌を打った。

そこに感情は乗っていなくて、少しだけ不安になる。



「わかったって。そのつもりで……な」



そのつもり……、って。

優しくしてくれるって、こと?


当たり前だけど、こういうことに慣れてるんだろうなっていう返事。

ほんのり寂しさを感じていると、いつの間にかトレーナーの中へと侵入していた飛鷹の手によって、無理やり意識を引き戻された。

脇腹から上に向かってなぞられて、ビクリと震える。



「……う、くすぐったい……」

「くすぐってぇだけ?」

「わかんな、……んんっ」



──わかんない。

でも、やめてほしいとは思わない。


わたしの理性を徐々に蝕んでいく、甘い痺れ。

初めて感じるはずのそれを、もっと、と求めてしまう自分がいる。

小さな波に脳が揺られて──。


不意に、あの夜のことがフラッシュバックした。

薄暗い帰り道。

連れて行かれた路地裏。

囲まれて、動けなくて。

わたしはこちらへと伸びる彼らの手を受け入れた。


あのとき感じたものと、今、飛鷹から与えられるものは、似ているようで全然違う。

だからこそ、やましいこと……とまではいかないけれど、自分の綺麗じゃない部分を暴かれてしまうような感覚に陥って。

背中にある跡を、見られるかもしれないって思ったら……。

飛鷹の視線に耐えられなくなったわたしは、顔を逸らした。