Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



もちろん自分からキスをしたことなんてないから、どうすればいいかわからなくて。

飛鷹がしてくれたやり方を必死に思い出しながら……ぎこちなく、自分の唇を飛鷹のそれと触れ合わせる。


やわらかくて、つめたいのか、あついのか、よくわからない温度。

くっつけて、離して。
またくっつけてみる。

小さな音を立てながら何度か繰り返したのに、



「……おい、……ぬるすぎ」



合間にダメ出しをされて、顔が熱くなった。



「俺……全然、喋れてんだけど」



悔しい。

でも……その奥に、飛鷹のほうからなんとかしてくれるはず、という淡い期待もあった。

すると、



「口開けろ」



本当に汲み取ってくれたように飛鷹が言うから。

わたしはおとなしく言われた通りにする。

背中を抱き寄せられ、



「……んっ、……」



舌を絡め取られて、頭の中がぐわんと揺れた。

唇よりもっと熱を持った感触が、わたしの中に入ってくる。

また新しいキスの仕方に、飛鷹とわたしの違いを見せつけられた気がして、切なくなって。

でもすぐにそんなモヤモヤとした気持ちすら、跡形もなく吸い取られてしまった。



「はー……やべ……気持ちいい」



飛鷹が唇を僅かに離して、そうこぼした瞬間。


ふわりと体が浮いて、見えていた景色が回ったかと思えば、わたしは背中からベッドに沈んでいた。

視界に広がるのは、天井。

びっくりしている間に、飛鷹が覆い被さる形で見下ろしてくる。



「……さすがに、余裕ねぇ」



降ってきた低い声に反応して、体の奥がズクリと疼いた。

これから起こることを、待ち望むみたいに。