Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



駄々っ子を前にしたように眉を寄せた飛鷹は、わたしをなだめたいのか、髪をとくように触れてくる。



「頭とか、体とか……鈍くなる薬。ワケあって飲んだ。熱は一時的なもんだし、痛みもそれのせーで飛んでたわ」

「……意味、わかんない。どういうこと……」

「わかんなくていーんだよ。切れてきたって言ったろ?」



全くもって、なにもよくないよ。

そんな薬を飲まなきゃいけないって、どんな状況なの。

というか、飲んでも大丈夫なものなの?


そう引っかかって──わたしの頭には、自分がなぎ高の人たちに飲まされた薬のことがよぎった。

飛鷹は、動けてはいるものの……、熱をもった身体とか、少し乱れた息とか。

喋るのも億劫なくらいに体が重たそうな様子とか。

あのときのわたしの症状に似ているようにも見える。


もしかして……。

なにか関係あったりするの?


モールで見かけた、“多々良くん”を探していた4人組のことが浮かんだ。



「誰かと……喧嘩、とか。したの?」

「そー思う?」

「……」

「ただ転けただけとか、くそダセェ理由かもしんねーよ」



へらりと返ってきたのは、いくらなんでも冗談だってわかった。

反対に、予想通り、この怪我は人為的なものなのだと確信する。

またひとつわたしの中で、飛鷹となぎ高との繋がりが強まってしまった気がした。

だけど今は、そんなことを考えている場合じゃない。



「とりあえず、氷……冷やさなきゃ」

「いいって」

「でも。放っておいたら治りが遅くなっちゃう」

「んじゃ後でしてくれ。今は……」



飛鷹はゆったりと倒れるように、わたしの肩に額を乗せてくる。



「お前に、触っときてーの」