Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-




「……やっぱり。体調悪いんでしょ?」



きっと体温が高めなのも、そのせいだ。

だるそうに背中を丸める飛鷹は、はあ、と吐息をもらして、



「うぜー……。今さら切れてきやがった」



投げやりに放った。

なにかに向けられた突然の悪態に戸惑っていると、綺麗な瞳がゆらりと揺れて。

なんだか辛そう様子に、より一層焦りが湧く。



「だ、大丈夫? 横になる?」

「……気にすんな。すぐ慣れる」

「慣れる、って……」



そんなこと言われても。

現在進行形で、飛鷹の身体になにか異変が起きてるんだってわかって、ただ見ているだけではいられない。


“切れる”ってことは、……薬かなにかの、話?

解熱剤でも飲んだのかな……。


そう思ったのだけれど、すぐに──肋骨の下あたりを庇うように動いた飛鷹の手に気がついて、嫌な予感がした。


……まさか……。



「──ねえ。そこ、見せて」

「っ、おい」



許可をもらう前に、シャツの裾を捲り上げる。

肌があらわになって、ぐらり。

目に入ってきた光景が衝撃で、目眩がした。



「……これ……」



白い肌に浮き上がった、打撲痕のようなもの。

明らかに普通の怪我じゃない。

赤紫色に腫れているそこに、わたしはなんて声をかけていいかわからず、痛そう、とだけ絞り出した。



「骨は無事。大したことねぇよ」

「なに言ってるの……。大したことだよっ?」



なんてことなさそうな顔をする本人に、怒りに近いものが湧いて、声が震える。



「だって体、熱持ってる……」

「それは、原因コレじゃねーから」

「じゃあなに?」



まるで責めるような言い方になってしまい、わたしは込み上げるものを抑えるように唇を噛んだ。