Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-




「っ、ねえ、まってよ……」

「なんで?」

「なんでって……。今日……は、どうしたの?」



会えないんじゃなかったの?

言ってた用事は、どうなったの?

……どこで、何をしてきたの?


そんな疑問をひっくるめてじっと見つめる。


しばらくして。

説明を求めるわたしの視線に、飛鷹が折れたように口を開いた。



「1日くらい、へーきかと思ったんだけどな」



さらりとわたしの前髪を撫でて、



「時間空けるとお前、忘れそー、だし……」



そこまで言って、……結局、また顔を寄せてくる。

今度は浅くて、短いキス。

繰り返されて、はぐらかされそうになる。



「……忘れるって、なにをっ……?」

「さあな。……俺の、こと、とか?」



──なに、それ。


そんなわけない。

あんな風にふたりの時間を過ごした相手のこと、忘れるだなんて。


もしかして……わたし、軽い女の子だと思われてる?

……それとも。

深い意味はなくて、思いついたことをテキトウに言ってみてるだけ?


ただでさえ飛鷹の本心は読めないのに、わたしに考えを巡らせる隙を与えないように、触れ続けられるせいで。

なにも……わからないまま。



「もーいいから。……黙ってろ」



飛鷹の肩からタオルが落ちた。

わたしの後頭部に手を添えて、前かがみになる。

距離がさらに埋まった、その、瞬間。

目の前の体が微かに強ばったのが感じ取れて──、わたしは後ろに身を引いた。