Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



その音は、本条くんにも聞こえたようだった。



『……こんな時間に、来客?』

「そう、みたい。ごめんね。ちょっと待ってて」



わたしはスマホを持ったまま、インターホンへと向かう。

モニターを確認して、──途端に、心と体のどちらもが引き締まった。

映っていたのは、飛鷹だった。


うそ。
どして……。

今日は来れないって、言ってたのに。


わたしは慌ててスマホをミュートにして、インターホンの通話ボタンを押した。

うわずった声で、はい、と応答する。



『……わり。俺、だけど。開けてくんね……?』



聞こえた飛鷹の声は、どこか疲弊しているように感じた。



「う、うん」



わけもわからず焦燥感にかられて、すぐにエントランスを解錠する。

予想外の事態に心が騒いで、落ち着かない。

ひとまずスマホをデスクの上に置き、タオルを掴んで玄関に向かった。


飛鷹の様子が気がかりで……、待っていられず、迎えに行こうと扉を開ける。


──外はまだ、雨が降っていた。