校内で一番のオープンスペースへと繋がる、中央階段の踊り場。
やけに広々としたその床を無心で掃いていると、清掃時間のわたしたちに加わるように、休む間もなく窓ガラスを洗っている雨が目に止まった。
……いつの間に降り出してたんだろう。
ひょっとしたら、気がつかなかっただけで、だいぶ前からだったのかもしれない。
絶え間なく水滴が伝う窓には、すっかり結露ができていた。
──昨日は降らなくてよかった。
バイクの後ろに乗せてもらったことを思い返し、感じた清々しさが蘇る。
貴重な体験に思いを馳せながら、わたしは箒の柄にもたれた。
飛鷹は……雨の日にもバイク、乗るのかな。
それって、ちょっと危なかったり、しないのかな。
気を抜くと、頭はたちまち飛鷹のことで埋め尽くされる。
お昼くらいまでは、そんな自分を恥ずかしく思ったものの、今はもう開き直り始めていた。
だって。仕方ない。
誰かを好きかもしれないって思ったの、……はじめて、だから。
……3回しか会ったことない人にこんな気持ちを抱いてしまうあたり、恋愛経験値の低さを物語っている気が、するけども。
少し前までは、男の人と話すことすら苦手なほうだったんだ。
それが今では、なぎ高の人たちとあんなことがあって、本条くんや甲斐田くんと関わるようになって……。
ちょっとだけ慣れてきた感じがする。
冷静に振り返ってみると、ここ数週間、すごく目まぐるしくて。
正直戸惑いや不安はまだ大きい。
それでも……飛鷹と出会えたきっかけを考えると、悪いことばかりじゃなかったって思えてしまうから、難しい。


