Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



背後で扉の開く音がして、半ば押し込まれる形で、玄関の敷居を跨ぐ。

わたしの肩からバッグがずり落ちて、ドサッと床で音を立てた。


薄暗い室内に差し込んだ廊下の光。

それはすぐに細くなり、ドアが重たい音を立てるのに合わせ、消えた。



「っ、飛……鷹……?」



帰るんじゃなかったの?


そんな疑問は、再び口を塞がれ、呑み込まれてしまう。

静かな玄関には、わたしたちの息遣いだけが聞こえていた。



「……次は、帰らねぇから」



髪の間に飛鷹の長い指が差し込まれ、今度は耳のふちに口づけられる。

思わず身をよじると、そんなわたしを制すように、



「朝まで一緒にいよーな?」



低く囁かれて、近くの肌がジワ……と熱をもった。

もう──……のぼせて、溶けてしまいそうだった。



わたしの様子を見て、飛鷹は気が済んだように離れる。



「お前もそのつもりでいろよ」



昨日と同じように、こちらの返事を待つことはせず。

わたしの頭をそっと撫でてから、出ていってしまった。