名前を知れた。 たったそれだけのこと。 だけどわたしにとっては、大きな一歩を踏み出せたくらいの喜びがあった。 関わることがなさそうなタイプのひと──はじめはそんな印象を抱いたのに、今は彼を取り巻く世界の、すぐ目の前まで迫っている気がする。 その世界がどれだけの広さで、どんな色をしているのかも。 ほんの少し覗いたくらいじゃ、ちっとも確かめられていないままだけれど。 急くような気持ちが、このまま足を踏み入れてしまいたい、と、胸の内を強く叩いていた。