Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



ねだるように、繋がった手に少しだけ力を込める。

またからかうように「だめ」だって即答されるかも。なんて予想は、外れた。


返事がすぐに降ってこない。

不安になって、顔色を窺うように視線を合わせる。


……困らせた?

いきなり踏み込みすぎちゃった、かも。


思えば、彼がわたしの名前を知ったのは、たまたまきっかけが訪れただけの、単なる偶然で。

知りたい。教えて欲しい。と言われたわけじゃない。


わたしだけ聞き出そうとするなんて、不公平だったかな。


だんだんと後悔が大きくなっていく。


わたしたちの関係は、その始まり方は、一般的とは言えない。

だからこそ距離の詰め方の正解が、わからない。


そもそも、これ以上距離を詰めたいと考えていること自体、間違っているのかもしれない。


ついさっき生まれたばかりの勢いが萎んでいって、いよいよ、質問を取り消そうとまで思い直したとき。

繋いだ手を離されて、──代わりに、彼の指先が手のひらを滑った。