「槙野だったら、何味にする?」

「ヤヨちゃん…、涼太を好きでいること…」

僕を見つめたままだったヤヨちゃんは、泣きそうな顔のまま、ただジッと僕を見ている。

「涼太以外を好きになることは…無い?」

訊いた僕の声だけが、ガランとした教室に彷徨っているみたいに鳴って、消えていく。

涼太以外を、もしも僕を好きになってくれたら、僕はこんな風にヤヨちゃんをかなしませたりしない。僕はずっと、これからもずっとヤヨちゃんのことが好きだから、自分が好きな人が自分以外の誰かを好きだとか悩ませたりもしないし、ヤヨちゃんの話をいつだってちゃんと聞く。嘘でも、なんだって。僕が一番守りたい人はヤヨちゃんで、僕をどれだけ利用されてもいい。

でも、「涼太以外を好きになって欲しい」と願ったその僕の言葉が、目の前に居るヤヨちゃんを一番傷つけていたことに、僕は気づいていなかった。僕はやっぱり鈍感で、ヤヨちゃんのことばかりを考えていたと思っていた僕は、本当は自分のことしか考えていなかったのかもしれない。

ジッと僕を見ていたヤヨちゃんの目が、信じられない、と言いたげに細められて、少し眉間にシワを寄せた様な顔になった。

ねぇヤヨちゃん。やっぱり僕がヤヨちゃんを好きになることは、おかしいかな。涼太が僕を好きなのは全然普通のことで、僕がヤヨちゃんに好かれたいと思うことは、許されないかな。