「槙野だったら、何味にする?」

電車を降りて、ギュッ、ギュッと鳴る雪の音を数えながら家までの道を歩いた。これくらいの積もり方なら、明日の天気さえ良ければ少しはアスファルトが見えているかもしれない。
振り返って自分が付けた靴の跡を見る。涼太の靴の跡よりも小さい。覆らない、僕と涼太の差。

ギュッ、ギュッ。マフラーに埋めた口元。自分の吐息で少しだけ湿っていくのが分かる。

家の前まで着いて、玄関先に誰かが立っていることに気がついた。顔を上げなくても分かる。見慣れた人気のスニーカー。黒いラインが入っている。

「涼太。」

ゆっくり顔を上げて涼太を見た。顔が完全にマフラーから出て冷たい。マフラーに埋もれたままの涼太の頬っぺたに触れて、無理矢理顔を上げさせた。
涼太は少し困った様な笑い方をして、「このマフラーの使い方、槙野と同じだってヤヨに言われた。」と言った。

「そんなの、誰だってやってるでしょ。」

僕は涼太から目を逸らす。涼太は「そうだな。」と短く言った。

「どうしたの。涼太の家、通り過ぎてるじゃん。」

駅からは涼太の家の方が近い。そこから僕の家までは、十分はかからないけれど五分以上はかかると思う。

「槙野こそ、遅かったな。ヤヨを送ってからより遅いんだから、お前相当教室に残ってただろ。」

「どうだろう。分かんない。」

もうすぐ十九時になろうとしている。実際、教室を出たのは見回りの先生に早く帰れって促されたからだ。涼太達が教室を出てから三十分は経っていたことは間違いない。
ヤヨちゃんの家は高校から近い。だから涼太がうまく電車に乗り継ぎが出来れば、僕より全然早く帰れていてもおかしくはない。

「冷えたでしょ。中、入る?」

涼太を誘ったけれど、「いや、いい。」と断られた。その代わり、「お前さ。」と言いながら、一歩僕に近づいた。