購買は混んでいた。むしろお昼の同じ時間に全校生徒が使用できる購買が、これくらいで抑えられていることのほうがすごいんじゃないかって思えてくる。お弁当ってありがたいなぁなんて変に感心していた。
「焼きそばパン、まだあるかなぁ。」
ヤヨちゃんが不安そうな声を出す。背伸びをしてレジの方を一生懸命に見ようとしている。パンは購買のおばちゃんに注文して、おばちゃんがケースから取り出してくれる。
「ちょっと待ってて。」
僕はヤヨちゃんに言ってから、前の人に「すみません」と声をかけながらレジに向かった。
パンが並ぶケースの中には、思っていたよりも多くパンが残っていた。焼きそばパンもちゃんと残っている。良かった。ヤヨちゃんがガッカリしないで済んだ。僕を迎えに来てくれてタイムロスしていたから、売り切れてしまっていたら申し訳ない。
「すみません。焼きそばパンとカツサンドと…」
いつもより大きめの声で注文する。おばちゃんがテキパキとケースからパンを取り出して、神業でビニールの袋に入れていく。プロだ…。
「ヤヨちゃん、お待たせ。」
待ってて、と言った場所から一歩も動かずにヤヨちゃんは待ってくれていた。忠犬ハチ公みたいで可愛い。
「はい、焼きそばパン。あとオレンジジュース。」
「槙野ありがとう!オレンジジュースも!?よく分かったね!」
「当たり前じゃん。」
僕はわざと得意げな表情を作って言った。ヤヨちゃんも笑っている。焼きそばパンとオレンジジュース。僕は絶対に間違えないよ。
「槙野は何にしたの。」
「カツサンドと、これ。」
これ、と言いながらヤヨちゃんに見せた物の名前を、僕は知らない。何なのかよく分からない物を見せながら「おいしいよね、これ。」って言った。
じゃがいもを丸ごと揚げてあって、うすく衣が付いている。塩味だ。すごくおいしい。
「うん、“じゃがちゃん”としか言えないよね。」
ヤヨちゃんがクスクス笑う。僕達は名前の分からないこの丸ごとじゃがいもを「じゃがちゃん」と名付けている。不思議とパンが並ぶケースにもPOPが付いていなくて、いつも「これ」と言って注文している。
「手、小さいね。」
じゃがちゃんを見せたままの僕に、ヤヨちゃんが言った。僕は手をサッと引っ込めて「コンプレックス。」って言った。
「あーあ。せっかく半分こしようと思ってたけど、あーげない!」
「えーうそうそ!槙野様ー!」
僕は笑いながらヤヨちゃんの先を行く。ヤヨちゃんが早足でついてくる。屋上にはまだまだ着きたくなかった。
「焼きそばパン、まだあるかなぁ。」
ヤヨちゃんが不安そうな声を出す。背伸びをしてレジの方を一生懸命に見ようとしている。パンは購買のおばちゃんに注文して、おばちゃんがケースから取り出してくれる。
「ちょっと待ってて。」
僕はヤヨちゃんに言ってから、前の人に「すみません」と声をかけながらレジに向かった。
パンが並ぶケースの中には、思っていたよりも多くパンが残っていた。焼きそばパンもちゃんと残っている。良かった。ヤヨちゃんがガッカリしないで済んだ。僕を迎えに来てくれてタイムロスしていたから、売り切れてしまっていたら申し訳ない。
「すみません。焼きそばパンとカツサンドと…」
いつもより大きめの声で注文する。おばちゃんがテキパキとケースからパンを取り出して、神業でビニールの袋に入れていく。プロだ…。
「ヤヨちゃん、お待たせ。」
待ってて、と言った場所から一歩も動かずにヤヨちゃんは待ってくれていた。忠犬ハチ公みたいで可愛い。
「はい、焼きそばパン。あとオレンジジュース。」
「槙野ありがとう!オレンジジュースも!?よく分かったね!」
「当たり前じゃん。」
僕はわざと得意げな表情を作って言った。ヤヨちゃんも笑っている。焼きそばパンとオレンジジュース。僕は絶対に間違えないよ。
「槙野は何にしたの。」
「カツサンドと、これ。」
これ、と言いながらヤヨちゃんに見せた物の名前を、僕は知らない。何なのかよく分からない物を見せながら「おいしいよね、これ。」って言った。
じゃがいもを丸ごと揚げてあって、うすく衣が付いている。塩味だ。すごくおいしい。
「うん、“じゃがちゃん”としか言えないよね。」
ヤヨちゃんがクスクス笑う。僕達は名前の分からないこの丸ごとじゃがいもを「じゃがちゃん」と名付けている。不思議とパンが並ぶケースにもPOPが付いていなくて、いつも「これ」と言って注文している。
「手、小さいね。」
じゃがちゃんを見せたままの僕に、ヤヨちゃんが言った。僕は手をサッと引っ込めて「コンプレックス。」って言った。
「あーあ。せっかく半分こしようと思ってたけど、あーげない!」
「えーうそうそ!槙野様ー!」
僕は笑いながらヤヨちゃんの先を行く。ヤヨちゃんが早足でついてくる。屋上にはまだまだ着きたくなかった。



