「槙野だったら、何味にする?」

八月。夏休み。
二人だけの暗い部屋で、「キスしたことある?」って僕に訊いたヤヨちゃんの声が脳内でこだまする。
今目の前で、まったく同じ様にヤヨちゃんが言ったのに、どうしてあの夜のことを思い出すんだろう。

「あるよ。」

あの夜よりもはっきりと、僕も言った。

「涼太と。」

ヤヨちゃんは僕の袖を掴んだまま、「そっか。」って、何かに納得した様に、小さく笑った。