「槙野だったら、何味にする?」

「そろそろ帰ろっか。後夜祭、終わっちゃったし、僕達も早く出よう。校門閉まっちゃうよ。」

僕とヤヨちゃんはベンチから立ち上がって、校門の方へ回った。後夜祭はとっくに終わっていて、まばらに残っている生徒達に、運動場の片付けをしながら先生達が早く帰れよって声をかけている。

運動場の真ん中辺りで、僕達にも担任が声をかけてきた。すみませんってヤヨちゃんと言いながら、小走りで校門を出た。

「送ってくよ。危ないし。」

「大丈夫だよ。」

「何言ってんの。大丈夫なわけない。」

僕は言いながら、ヤヨちゃんより先に立って歩き出した。ヤヨちゃんもそれ以上反対はせず、ついてきてくれた。
ヤヨちゃんと二人で、ヤヨちゃんの家までの道を歩く。涼太が毎日していたみたいに。不思議な気持ちになる。明日からはまた、この特権は涼太の物に戻るんだとしても、この夢みたいな時間は一生忘れたくない。

「そろそろ降りそうだね。雪。」

僕は空を見上げながら言った。雪が降りそうな季節になると、空気の匂いが変わる気がする。本当のところは分からないけれど。

「槙野。」

ヤヨちゃんの家まであと少し。ヤヨちゃんが僕の制服の袖を引いた。手が震えている気がする。それが寒さのせいかは分からない。

「どうしたの?」

電信柱の街灯のせいか、そこだけ異様に明るく感じて、スポットライトの様に僕とヤヨちゃんを照らしている。

「槙野。あのね、私、前よりもっとちゃんと槙野と親友になりたい。だから、もう隠し事は無しにしよう。」

「隠し事?」

まるで迷子の子供の様な目をして、ヤヨちゃんが僕を見ている。

「りょうちゃんは、やっぱり槙野のことが好きなんだと思う。」

泣きそうな目をしているくせに、ヤヨちゃんはキッパリと言った。

「ごめん。僕には分かんないよ。」

「うん。でも、私には分かるよ。ずっとりょうちゃんが好きだったから。槙野ともずっと一緒に居たから。」

怒っているんじゃない。自分が泣きそうなのを我慢して、僕を諭す様な口調でヤヨちゃんは言う。

「ねぇ、槙野は、キス、したことある?」