「槙野だったら、何味にする?」

「手、大丈夫?」

生徒会長が居た所に、同じ様にしゃがみながらヤヨちゃんが僕に訊いた。表情はまだ少し不機嫌そうだった。

「全然大丈夫だよ。無傷。その日湿布してただけだし。」

僕もまた、ヤヨちゃんの隣にしゃがみながら言った。

手は本当に大丈夫で、腫れもしなかった。同じ様な状況で、もしかしたらヒビが入ったりする人だって居るかもしれない。僕は運が良かったんだと思う。

「そう。ごめんね。」

「ううん。僕が勝手にしたことだよ。ヤヨちゃんが怪我しなくて良かった。」

ヤヨちゃんはもう一度ごめんねって言って、僕の目の前に線香花火を二本、スッと持ち上げた。
生徒会長と同じ様に、人差し指と親指でつまむ様に、両手で。ヤヨちゃんがここに来た時から、線香花火を持っているなって思っていた。

「勝負しようよ。」

「勝負?」

「漫画とかでよく見るアレ。火種が先に落ちた方の負けってやつ。」

ヤヨちゃんが言うのを聞きながら、そういう場合、何かを賭けるんだよなって思った。

「何を賭けるの?」

訊いた僕にヤヨちゃんは不思議そうな顔をしながら言った。

「何か賭けたいの?命でも賭ける?」

僕はヤヨちゃんが生きていてさえくれればいい。ヤヨちゃんの命は奪いたくない。
それには答えないで、ヤヨちゃんの左手から線香花火を受け取った。僕も同じ様に指先でつまみながら。

やっぱりヤヨちゃんは時々ロックで、そういうところが好きだって思った。