「槙野だったら、何味にする?」

「やよいね、中学の頃はもっと、ボーイッシュだったんだよ。」

生徒会長の言葉を聞きながら、今のヤヨちゃんとボーイッシュが結びつかなくて不思議な気持ちになった。

「ヤヨちゃんが?」

「そう。想像つかないでしょ。髪の毛もショートカットだった。今の槙野ちゃんくらい。」

ショートカットのヤヨちゃん。まったく想像は出来ないけれど、きっと可愛いと思う。

「今のヤヨちゃんは女の子!って感じなのに。何で変わったんだろ。」

「恋をしたから。」

生徒会長と目が合った。生徒会長の瞳が少し揺れた気がした。

「恋。」

「うん。」

僕には昔のヤヨちゃんを想像することは難しいけれど、そんなに変わってしまうくらいにヤヨちゃんは涼太を好きになって、涼太にも好きになって欲しくて、きっといっぱい努力したんだ。
髪型も好きな食べ物も涼太の前では変わっちゃうくらい、二人っきりになる為に嘘もつけるくらい。それを、僕は…。

「今よりもっとサバッとしてたやよいがどんどん女々しくなっていって、泣き言いうことも多くなって、それが悪いって言うんじゃないけど、正直、恋をしてるやよいは中学の時よりもずっと苦しそうだった。そんなに苦しそうなのに、悔しいけど、中学の頃よりもっともっと楽しそうだった。」

「何で…。」

生徒会長はもう一度僕を見て、それからにっこり笑った。

「槙野が居るから、って。」

「え。」

「槙野が居るから毎日楽しくしょうがないって。そう言ってた。やよいね、槙野ちゃんにわがまま言ってることも、都合よく槙野ちゃんを利用してるかもしれないってことも本当は気づいてた。
それで時々、槙野に嫌われたかも、私最低なことしてるって、私に泣きついてきたりして。
ねぇ、今私のことだって都合いい時だけ利用してるんだよって意地悪言ったりして。
それでもやよいは槙野ちゃんのこと、利用する為じゃなくて…、本当に槙野ちゃんのこと大事だって思ってることは、本当だと思う。」

生徒会長は僕から目を離して、くるくるしていた針金と炭だけになった花火を見ている。
その横顔は、寂しそうだった。