「槙野だったら、何味にする?」

運動場の端に座って、みんなが楽しんでいる花火を眺めていた。ヤヨちゃんが離れている所で友達と花火をしているのを見つけた。綺麗だと思った。涼太の姿は見当たらない。体育館でLIVEを観ているか、もしかしたら屋上に居るのかもしれない。

「槙野ちゃん、お疲れ様。」

パッと前を向くと、生徒会長の女子が花火を二本持って、僕に笑いかけている。
花火は火薬が緑とピンクに着色されて固められている。持ち手は針金だ。緑の方を僕に差し出して、「花火しようよ。」って言った。
花火を受け取った僕の腕を生徒会長が引いて、僕を立ち上がらせた。
先を歩く生徒会長の後ろに従った。さすがは生徒会長だと思った。

花火をしていいラインの内側に入って、先生の傍に立てられたロウソクで火をつけた。人が集まっている所から少し離れて、しゃがんで散る火花を黙って眺めた。
火花は最初は白かったけれど、少しずつ黄色とか赤とか、うすく色を変えていく。燃えた火薬は細く黒い炭になって、火薬の根本まで燃えてそのまま黒く固まった。

「この花火、駄菓子屋さんの?」

「ううん。他の生徒か先生が買ってきたやつだよ。何で?」

「夏に余った物って言ってたから、もっとシケてると思ってた。」

「確かに。」

言いながら僕も生徒会長も笑った。

終わった花火の針金を人差し指と親指でつまんでくるくるしながら、生徒会長が言った。

「やよいと喧嘩でもした?」

僕は黙って生徒会長を見ていた。二十時になろうとしている。運動場は夜だったけれど、花火、教室や体育館からもれる明かりでそんなに暗くは感じなかった。

「やよい、わがままだもんね。」

「そんなことないよ。」

生徒会長は俯き加減に笑って言った。

「私ね、中学生の頃はやよいと親友だったんだよ。」

「だった、って?」

「槙野ちゃんに盗られちゃったってこと。」

「そんなっ…盗ったつもりなんて…」

「うそうそ。あんた達が何日も何日もあからさまに喧嘩しててムカつくから意地悪言っただけ。」

顔を上げた生徒会長は、悪戯が成功した子供みたいな表情をしている。
僕は「意地悪。」って呟いた。