「槙野だったら、何味にする?」

文化祭は三日間続いた。僕が通う高校は、クラスでの催し物は強制じゃない。僕のクラスは参加しなかった。高校最後の文化祭は、係とか準備とか気にしないで、思いっきり楽しみたいって声が多かったからだ。
そんな人がほとんどなのに、「思い出作りの為に」って実行委員をやりたがったヤヨちゃんは、やっぱりちょっと変わっている気がした。
文化祭は、三日間も遊ぶ為だけに登校できるなんて最高だった。もちろん、実行委員は文化祭が終わるまで続くから僕には仕事があったけれど、登校中何時間も授業があるのとは比べ物にならない。

最高だと、思いたかった。高校最後の文化祭の思い出は、「実行委員」だけになって終わろうとしている。最後なのに、ヤヨちゃんとも涼太とも一緒に過ごせなくてかなしかった。

三日目の文化祭終了後、体育館や教室、運動場なんかを見ていると、日常に戻っていく寂しさを感じた。僕達も自分が一番力を入れていた校門の装飾やアーチ、電飾、バルーンアートなんかを取り外していく。ヤヨちゃんは寂しそうな顔をしていた。

外部から見えそうな場所の片付けがあらかた終わって、今からは後夜祭だ。体育館のステージには音響機器とかがそのままになっていて、軽音部がLIVEをするらしい。

運動場では花火を楽しむ生徒で賑わっていた。ラインを引く石灰で、運動場の一部が囲われている。その範囲内で手持ち花火だけなら、と許可が出た。
先生が三人居て、一緒に花火を楽しんでいる。僕のクラスには、おばあちゃんが駄菓子屋さんをやっている友達が居る。最近では町の駄菓子屋さんは滅多に見かけなくて、懐かしくてうれしいと僕の母さんは喜んでいた。
その友達が、夏に売れ残った花火をたくさん持ってきてくれた。みんな季節外れの花火にうれしそうだった。