「槙野だったら、何味にする?」

すごく、ものすごくコンプレックスがある。
僕は、ヤヨちゃんより身長が少しだけ低い。ヤヨちゃんは涼太よりはずっとずっと低いけれど、僕よりは高い。
体育や身体測定のたびに嫌で嫌で堪らなかった。自分と涼太の差を見せつけられている気分にもなったし、そのたびにヤヨちゃんが僕よりも涼太を好きな理由をいくつもいくつも叩きつけられている気持ちになる。

晴れの日は男女別っていうのも何となく嫌で仮病を使いまくっていたけれど、よく考えてみれば男女混合になる雨の日の方が、涼太との差を実感するじゃないか。
今更気がついた自分に、僕は一人で苦笑いを浮かべた。

身長差に男とか女とか関係ない。実際に男性より身長の高い女性はたくさんいるし、女子同士だって男子同士だってかなり差がある人だっている。
ヤヨちゃんは自分のことを「女子の中では高い方だよ。」なんて言っていたけれど、そんなことは無いと思う。
それはたぶん、僕と比べていたからだ。僕の方が小さいからそう思ってしまったんだろう。僕は、手も小さいから。

コンプレックスばっかりだなって思った。もしもこの体の作りもヤヨちゃんの恋愛対象から外れる原因なんだとしたら、僕はこの遺伝子を恨んでしまいそうだった。でも、ヤヨちゃんはそんな女の子じゃない。それは絶対に。
ヤヨちゃんだから僕は大好きなんだ。ヤヨちゃんだって、理由がはっきり分からなかったとしても、涼太だから好きなんだろう。

「槙野のことは絶対に好きにならない。」

そう言ったヤヨちゃんの言葉が突き刺さる。
もっと根本的な何か。僕の弱さや嫉妬、自分勝手にヤヨちゃんの恋を壊そうとしてしまったこと。
身体的なことなんかじゃなくて、僕自身の弱さが壊してしまったんだ。