「おーいお嬢ちゃん起きろ」


「はやく起きないと、この変態にセクハラされるけどいいの」


「なんで疑問系じゃないの?! おっさん泣くよ?」


「勝手に泣け」



いつの間にか少年とおじさんが目の前に立っている。また例の言い争いを始めたが、もう慣れてしまったが。気弱そうな女の人が窓の外を指さした。



「あの、とても綺麗な花火が見えるんです」


「わあっ……」



車窓の外は、瑠璃の花が大きく花開いて散っていく。ほんの一瞬、狭間の。それがいくつも咲いて、また散って――。




みんなで花火をみる。


夢の中だから、夢花火を。




どこからかまたあのくじらの歌が流れてきた。



くじらの歌とともに夜明けを迎え、断片的に残った真夏の夢と、星屑サイダーのあまさがまだ口の中に残っている。