それはきっと、甘い罠。







からかわれてるって分かってるのに、鞍馬君の言葉一つ一つが心臓に悪い。


授業の終わりを知らせるチャイムが学校全体に鳴り響くと同時に、鞍馬君の周りには男女問わず人が集まってきた。


席が隣同士になったからかな、前よりも鞍馬君の人気っぷりが目に見える。


さっきまで人気者と二人だけで喋ってたって、奇跡に近いくらいスゴいことなのかも。



こうして見ると……遠い存在なんだよね鞍馬君って。


「このみ」


机に肘をついて、なんとなく鞍馬君を盗み見していると。


聞き慣れた声に名前を呼ばれて顔を上げる。



「あっ、なっちゃん。どうしたの?」


「このみの隣が鞍馬とか。朝にあいつが絡んできた瞬間から嫌な予感はしてたけど。
 まさか当たるなんてね。
 何もされてない?」


「うん、大丈夫だよ。
 でも、なっちゃんと離れたのは心細いかな」


「僕もだよ。
 あっ、そういえば……今日美術部の奴らにモデル頼まれてて、一緒に帰れなくなったけどひとりで帰れる?大丈夫??」


心配そうに見つめてくるなっちゃん。


なっちゃんは器用で何でも出来るから、帰宅部なのにたまに助っ人として色んな部活からお呼ばれされることがある。


……なっちゃん面倒見いいから何だかんだ断れないんだろうな。



「もう、またなっちゃんは私のこと子供扱いして。ひとりでも大丈夫だよ?なっちゃん居ないと寂しいけど」


「こんどアイス奢ってあげるから。
 パプコでいい?」


「うん、私パプコ大好き」


「知ってる」