「ここで食べますか?」


さやかちゃんが広げていたお弁当を少し寄せた。



「え、えっと……」


いいのかな?



「あの、ずっとそこに立っていられると食べにくいです」


「あっ、そっか。ごめん」




相変わらずつれない態度。


でもさやかちゃんの声は不思議なことに、全然トゲトゲしていない。


オレは決心して、
「お邪魔します」
と言って、さやかちゃんの向かいに座った。





さやかちゃんは何も言わず、お弁当を食べ始めた。



……あっ、そっか。

黙食。




オレも黙ってパンの袋を開ける。


沈黙の中、パンをひと口。





さやかちゃんをチラッと見ると、目が合ってしまった。




さやかちゃんは少し驚いた様子で、お箸からから揚げを落としてしまった。


「あっ」

ふたりの声が重なる。



から揚げはギリギリお弁当箱の中に落ちていて、
「セーフでした……」
とさやかちゃんは呟いていた。




……可愛いすぎかよ。





心の中で密かにきゅんとする。






それからは黙って食べた。
残念なことにオレはすぐに食べ終わってしまう。



ジュースを片手に立ち上がると、さやかちゃんがもぐもぐしながら、
「待って」
と言った。