【溺愛結婚】懐妊後、御曹司から猛烈に溺愛されています。〈改稿版〉



 その現場を目撃した日の夜、藍は何事もなかったかのように家に帰って来た。

「ただいま、透子」

「……おかえり」

 だけど藍の顔を見ると、朝のあの場面のことが頭からずっと離れなくなった。
 
「寂しかったよ、透子」

「……うん」

 いつものように抱きしめられても、何も嬉しくなかった……。

「お、今日はハンバーグか。美味そうじゃん」

 藍はテーブルに並べられたハンバーグを見て、嬉しそうに笑っていた。

「手、洗ってくる」
 
 と、藍は洗面所へ行った。

「お待たせ。食べようか」

「……うん」
 
 二人で夕飯を食べ始めると、藍は「うん、美味いな」とハンバーグを食べていた。
 けどわたしは、あまりお箸が進まなかった。

「透子?どうした?」

「……え?」

「何かあったのか?……もしかして、つわりひどいのか?」

 夕飯のハンバーグを食べながら、藍はわたしに問いかけてきた。 心配そうな顔をしている。

「……別に」

 藍とあの女が一緒にいる場面を目撃してから、なんか胸の奥がモヤモヤする。 心の奥にポッカリと穴が開いたみたいに……。

「……ごちそうさま」

 食欲すら失ったわたしは、夕飯をあまり食べれずに席を立った。