その次の日も藍の後を付けていくと、あの女はマンションに来ていた。
そしてまた藍に近寄り、何かを言っていた。必死に訴えているようにも見える。
「やっぱり……また今日もいる」
会話の内容は離れていてよく聞こえないけど、明らかに藍は、嫌がっているようにも見えた。
「……え?」
そしてその時、立ち去ろうする藍の腕を強引に掴んで引き寄せたその女は、そのまま藍の口に、キスをしてきたのだった。
「……っ!」
え、ウソでしょ……。今あの人……藍にキス、した?
「やめろ……!何するんだ……!」
藍は明らかに動揺しているようにも見えた。大きな声で怒鳴りつけていることだけは、見て分かった。
「……っ、何なの……。何なのよ」
あの女、何なの……。あの女、藍のなに?
「何でキス、するのよ……」
藍も藍だ。油断してるから、そんなことをされるのだ。……バカなのよ、藍は。
「……帰ろう」
そんな二人の姿を見ているうちに、ショックがどんどん大きくなっていったわたしは、散歩するのをやめて大人しく家に帰った。
家に帰るとわたしは、ベッドに横になりながら、ため息ばかり付いた。
「アンタのパパ……何考えるのか、分からないよ」



