この子はまだこんなに小さいのに、ちゃんと生きようとしている。
ちゃんとこうしてそのことが分かるだけで、嬉しくて仕方ない。
「透子、ありがとうな」
「え、何? いきなり?」
お礼を言われるほどのこと、何かした……?
「産むって言ってくれて、ありがとう」
「……別に。勘違いしないでね、藍のためじゃないから」
とは言ったものの、藍がこの子の父親であることに変わりはない。
「素直じゃないね、透子は」
お箸を持ちながら、ニヤニヤしながら笑っている藍。
「うるさい……。早く食べないと冷めちゃうよ」
わたしはそう言ってお茶を飲むと、お箸を持ってお味噌汁に手を付けた。
「いただきます」
藍はそんなわたしの表情を嬉しそうに見ながら、夕飯を食べ始めた。
「ん、やっぱり美味いな。落ち着く味がする」
と言いながら、藍は何度も肉じゃがに手を伸ばしていた。
「ありがとう。……ねえ、藍」
「ん?」
わたしはお箸を置いて藍に問いかける。
「藍は……高城社長がわたしのこと、高城家の嫁として認めてくれると思う?」
ずっと気になっていた。高城明人が、わたしを嫁として認めてくれているのか。
妊娠して跡継ぎが出来たことを、どう思っているのか。



