藍だけだ、こんなにたくさん愛を伝えてくれるのは……。愛してるって言われると、少なからず嬉しい気持ちがある。

 藍はわたしの夫。その事実は、この先いつまで経っても変わらない。藍はずっと、この先だってわたしを愛してると言い続けるだろうな……。
 左手の薬指のその結婚指輪を眺めながら、わたしはこの先の未来を思い浮かべていた。

「藍とわたしは、まるで正反対……」

 それでもこうして一緒にいるのは、家族になるためだ。
 家族なりたいから、わたしたちは一緒にいる。

「……あなたのことちゃんと考えてくれてるよ。あなたのパパは」

 そう、藍はこの子のパパだ。藍は父親になるために、今から一生懸命頑張ってくれている。

「……わたしも、頑張らないと」

 この子をちゃんと産むために、しっかり頑張らないと……。
 いずれこの子は、藍の跡取りとして高城ホールディングスを継ぐことになるかもしれないから。
 男の子なのか女の子は、分からないけど。男の子ならきっと、大人になれば跡取りになるだろう。

「あ、そろそろ、検診に行く時間だ。急がないと」

 わたしは洗濯物を回した後、着替えをして財布と保険証などを持ち、検診へと向かった。