* * *



「ただいま、透子」 

「おかえ……わっ!?ちょっと、藍……!?」

 その日の夜、藍は帰ってきてすぐわたしをギュッと抱きしめてきた。

「会いたかった、透子。今日も愛してる」

「もう、藍ったら……」

 抱きしめる強さはちょっと強いけど、微かに香る藍のそのニオイにも、少しずつ慣れてきた。

「藍の、ニオイが……する」

 思わずそう呟くと、藍は「何だ。嬉しいのか?」とニヤリとしながら聞いてきた。

「……うるさい」

 藍から離れて背を向けると、今度は後ろから抱き締められる。

「きゃっ!? ちょっと、藍……?」

「透子、俺はお前のこと愛してるんだからな」

「何?いきなり……。わかってるよ」

 そんなことを言われてわたしは、そのくらいしか返す言葉がない。
 
「ずっと一緒にいよう。……これからもずっと、俺たち三人で」

 三人で……。それはわたしと子供と、三人でってことだよね……?

「藍……」

「透子、愛してる」

「……うん」

 そっと名前を呼ぶと、藍が頬に触れてくる。そしてそのまま見つめられ、藍と唇を重ねた。
 なぜか分からないけど、わたしは唇を重ねられて静かに目を閉じていた。
 藍の優しいキスに、なんだか安心さを感じた。